前日断念した大天井岳登頂ですが、見送って正解だったようです。この日も朝から快晴。ご来光日和です。
周りは雲海に囲まれており、私たちが来た道、これから行く道だけが雲の上に浮き上がっています。
西岳・槍ヶ岳方面
燕岳方面
この日もあまりゆっくりはしていられません。荷物を整え、早速6:00に出発です。2日目はまず下りから始まります。30分程下ったところにある大天井ヒュッテという山小屋を目指します。前日の疲れが残っていますが、目の前に広がる美しい景色を見て、何度も気持ちを切り替えながら一歩一歩進みます。
大天井ヒュッテを通過して、更に1時間程歩くと、ビックリ平に出ます。しばらく隠れていた槍ヶ岳方面の展望が突然開けます。まさにビックリです。
ビックリ平を過ぎると、槍ヶ岳やその奥の穂高を眺めながらの気持ちの良い稜線歩きが西岳まで続きます。大天井ヒュッテからヒュッテ西岳まで、コースタイムで2時間半。長い長い道のりではありますが、飽きることはありません。進むにつれて、少しずつ槍ヶ岳が近づいてきます。憧れていた稜線歩きを思う存分楽しむことができました。
リーダーのお話によると、この年の7月に同じコースを歩くプログラムがあったそう。その時の天気は生憎の雨模様。槍ヶ岳どころか、周りはガスに囲まれて視界はゼロ。冷たい雨の中、この長い尾根をただただひたすら歩くという、苦行のような山行になったそうです。槍ヶ岳山頂アタックの時だけ日差しが出て、それが救いだったとか。今回の旅で私たちは幸運に恵まれたことを感じました。
ヒュッテ西岳に到着する頃にはもうお昼の時間。楽しかった稜線歩きはここで終わりです。昼休憩をとり、早々に出発します。
写真を見て分かる通り、槍ヶ岳に向かうにはその手前の谷を通らなければなりません。一度大きく下り、その後再び槍ヶ岳に向けて痩せた尾根を登りあげていきます。これが、この表銀座コースの核心部と言われる東鎌尾根(ひがしかまおね)です。下りも上りも危険箇所が続くため、ここから槍ヶ岳到着まではヘルメットを装着します。
ほぼ垂直に掛けられたようなはしごが何度も出てきます。前後の人と声をかけ合って、慎重に進みます。はしごを下り終えた所も、両側が崖になっており、気が抜けません。
緊張の連続で体に力が入ったままだと疲れてきます。時々、大好きな高山植物たちを眺めて緊張をほぐします。
東鎌尾根も終盤にさしかかってきました。振り返ると、その景色にすごいところを登ってきたな~と自分でも驚いてしまいます。右下方に見える赤い屋根は殺生(せっしょう)ヒュッテです。槍ヶ岳はガスがかかって全貌が見えませんが、かなり近くまで登ってきたことが分かります。
この時の私たちはつくづく運が良かったようです。ガスがかかって曇り空になったためか、雷鳥の親子に出会うことができました。雷鳥から元気をもらって、2日目のラストスパートをかけます。
ヒュッテ西岳を出発して4時間半。槍ヶ岳のすぐ横に建つ槍ヶ岳山荘に到着しました。槍ヶ岳は雲の中。メンバーの疲れも溜まっていたため、槍ヶ岳へのアタックはまた翌日に持ち越すことにしました。
あんなに遠かった槍ヶ岳がもう目の前。ついにやってきた!という気持ちです。ガスの切れ間からは山頂を目指すたくさんの人たちと、山にかかるはしごが見えます。翌日夜明け前の暗い中を出発してアタックすると聞いて、岩場やはしごが苦手な私は、ド緊張しながら眠りにつくのでした。