私が唐松岳・五竜岳に登ったのは2019年8月。母と2人で2泊3日(熊本からの移動を含めると4日間)の山旅でした。
実は私は学校に勤めていて、その学校の理科の教員であるS先生(60代)とよく山へご一緒するのですが、今回はそのS先生のオススメでこのコースを選びました。
同じ北アルプスの穂高岳や槍ヶ岳、白馬岳などのメジャーな山々と比べて、あまり聞きなじみのなかった唐松岳・五竜岳。でも、実際行ってみると…
…などなど、北アルプスの魅力をギュギュぎゅっと凝縮したような大満足の素晴らしいコースだっだのです。先生がなぜおすすめしてくれたのか、納得しました。私もこのコースは是非皆さんにおすすめしたい!
また、遠方から電車を使って移動してくる私たちにとって、登山口までのアクセスが良いことも大きなポイントのひとつでした。その上、リフトを使ってある程度の標高まで上ることができるため、比較的簡単に頂上まで登れてしまうのです。
それでは早速、1日ごとに分けてこのコースの行程を紹介したいと思います。
登山前日(つまり0日目)、早朝に熊本を出発して新幹線と特急を乗り継ぎ長野までやってきた私たちは、山のふもと・白馬村からまたまたゴンドラとリフトを乗り継いで、そのリフト降り場の目の前に建っている八方池山荘に泊まりました。
その標高、すでに1,830m。そのため、1日目は移動の必要がなく、山荘を出た瞬間に登山開始です。まずはこのコースの1番の目玉とも言える八方池を目指します。
まるで空中散歩。雲を下に眺めながら緑の尾根を気持ちよく歩きます。八方池までの道は登山目的でない観光客も多く訪れるため、木道があったりと、よく整備されていて歩きやすいです。
振り返る度に、赤い屋根の山荘とリフトがどんどん小さくなっていきます。進行方向に向かって左手奥には翌日登ることになる五竜岳、そのさらに奥には双耳峰の鹿島槍ヶ岳が見えます。
八方池にたどり着くまでに、所々で立派なケルンに出会います。小休憩の良い目印になりました。
コースタイムで1時間程、あっという間に八方池に到着しました。
見てください、この景色。日本じゃないみたいですよね。
八方池とその右奥に見えるのは白馬三山(白馬岳・杓子岳・白馬鑓ヶ岳)です。カラフルな服装の登山客も、まるでキャンバスに描かれた絵画の一部のようです。この日は風もあまりなく、見事に池に映し出された山々を眺めることができました。
このとき時刻は確か9:30頃。山荘を出発した頃には雲一つかかっていなかった白馬三山ですが、この頃から雲に隠れてしまいました。日が昇ってくるにつれて、どうしても下界から雲がもくもくと山を駆け上がってくるので、雲のない八方池を見るには朝早めの出発がオススメです。
この日私たちが八方池山荘で相部屋をした女性2人は、日の出前に登り始めて池でご来光を見るということで、まだ暗いうちから出発していかれました。池から帰ってこられる時にちょうどすれ違い、「人がほとんどいない池でご来光見れて良かったよ~!」と話していらっしゃいました。貸し切りの八方池でご来光なんて贅沢ですね。写真がお好きな方にはたまらないのではないでしょうか。
ずっとここに座って景色を眺めていたいところですが、まだまだ先があるので出発です。八方池から今晩のお宿である唐松岳頂上山荘までコースタイムで2時間30分。足元に咲く高山植物や雪渓のひんやりした空気を楽しみながら一歩一歩足を進めていきます。
ちょっと疲れてきたな…、ついでにお腹もすいてきたな…、と思った頃、稜線出ます。そして私たちの目に飛び込んでくるのは、稜線の向こう側のこの景色です。
疲れも、お腹が減っていたことも忘れてしまう程のパノラマ。一番目を引くのは、正面の剣・立山連峰です。剣岳のその力強い姿に思わず見とれてしまいます。八方池ももちろんいいけれど、この景色はここまで登ってきた人でないと見れないと思うと、特別感があります。
右手には定番の赤い建物、唐松岳頂上山荘です。山小屋って、初めての場所でもなんだか安心するから不思議です。
そのまた向こうには、本日のお山・唐松岳が現れました。小屋の前のサインも味があって素敵です。
ここで一旦お昼休憩をとります。できるだけ荷物の量を減らすためにお昼ご飯を持ってきていなかったので、山荘でカップラーメンを買っておいしく頂きました。山で食べるカップラーメンってなぜか美味しいんですよね。疲れた体にスープの塩味が染みわたります。ただし、山料金なので通常の何倍かのお値段がします。
水やジュースなども同様です。仕方がありません。それでもついつい我慢できず、私と母はコーラまで飲んでしまいました…。夏の日差しで火照った体に冷たいシュワシュワ、美味しくない訳がありませんよね。高級ジュース、ごちそうさまでした!
一休みしたら、小屋の前にザックをデポして今日の最大の目的地である唐松岳を目指します。頂上までは片道20分。ザックから解放された体はとっても軽くて、お散歩気分です。
足元には、高山植物の女王「コマクサ」の群生が。その気品漂う姿に、女王という名も頷けます。唐松岳頂上山荘から唐松岳に向かう道は、山小屋と山の位置関係といい、道の雰囲気といい、燕山荘から燕岳への道とよく似ています。
途中来た道を振り返ると、またまた素敵な景色がありました。
青い空に山の緑と岩の白、山小屋の赤にカラフルなテント。人が小さくてジオラマのように見えます。夏の山って本当に色鮮やかなんです。
山の上で聞こえてくるのは、鳥の声と自分たちの足音だけ。たまに遠くから人の話し声が聞こえるくらい。車の音も、テレビの音も、電話のなる音もしない。目の前にはこんなに鮮やかな景色が広がっているのに、静かすぎて自分の耳が逆に吸い込まれそうになるもんだから、なんだか不思議な感覚になります。日常生活を送っていたら、自分の周りが完全に無音になることってないですよね。山は山に登る人たちの、目も耳も、心も癒してくれます。
そんなことを考えているうちに、唐松岳の山頂に到着しました。ここからの眺めも最高です。標柱がちょうど明日登る五竜岳を指しています。とにかく大きい。
このあと山荘まで来た道を戻り、1日目の行程は終わりです。まだ初日だというのに既に北アルプスを大満喫していました。
しかし… この日は花の開花シーズン、久しぶりの晴れの土日と色々な条件が運良く(悪く?)重なり、山小屋は大・大・大混雑!!!夕食までの待ち時間も、部屋に入りきらず廊下まで人が溢れている状態でした。なんと夜は布団1つに4人で寝てくださいとの指示が。うちらイワシの缶詰か!とみなさんイライラしだす始末。こちらの山小屋は予約制ではなく、他の山小屋にはなかなかない、その日に来た人は全員受け入れるというシステムなのだそうです。布団に2人くらいまでは覚悟していましたが、さすがに4人では眠れそうにありません。本当はだめなのでしょうが、廊下の隅っこで横にならせてもらうことにしました。
S先生がこの1週間後くらいに同じ山小屋を利用したときは、そこまで混んでおらずゆっくり休めたそうです。あの混みようは一体なんだったのでしょう。これがこの旅唯一の悪い思い出となってしまいました。しかし、考えようによってはこれも滅多にない経験でしょうか。施設自体はこれまで利用した山小屋の中でも1番きれいだったので、混んでさえいなければとても快適に過ごせると思います。
ご飯はちゃんと座って落ち着いて食べることができました。それだけでもよかった…
2日目に続く⇒